ユネスコが「軍艦島」展示内容に「強い遺憾」

前代未聞の決議採択に軍艦島の元島民は怒りを抑えきれなかったという。この背景を検証すると、国を挙げた韓国の働きかけと「徴用工」訴訟を支援する日本の市民団体の存在が浮かび上がる。ユネスコが元島民の声に耳を傾け、本来の役割に立ち返る日は来るのか。

オリンピック開会前夜のことである。会議室のモニターで、中国の福建省福州で開催された国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会(オンライン形式)を見ていた。田学軍議長は「明治日本の産業革命遺産についての決議を審議なしで採択する。なお、決議に関する声明や宣言は一切行われない」と発言。長崎市の端島(はしま)炭坑(通称・軍艦島)を含む世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」について、ユネスコは7月22日、戦時徴用された朝鮮人労働者に関する「産業遺産情報センター」の説明が不十分だとして「強い遺憾」を盛り込んだ決議を採択した。決議に付されたユネスコとイコモス(国際記念物遺跡会議)の合同調査報告書は、日本政府が東京都新宿区に開設した「産業遺産情報センター」の端島炭坑の展示に対し、「犠牲者を記憶にとどめる」措置としては、「より暗い側面」を含め「多様な証言」を提示するよう求めている。審議なしの議長裁定であり、極めて政治的な決議であった。世界遺産条約においては、歴史解釈における国家の主権が認められている。ユネスコが調査団を派遣し、「保全」の問題ではなく「展示」で是正の決議をするのは前代未聞である。

震災遺族らの歩みから学ぶ 宮古でワークショップ

 東日本大震災の犠牲者遺族らの生活再建の歩みをたどるデジタルアーカイブ「忘れない 震災遺族10年の軌跡」を題材にしたワークショップ(岩手日報社主催)は4日、宮古市宮町のイーストピアみやこで開かれた。東京大大学院の渡辺英徳教授らが、最新映像機器リキッド・ギャラクシーのパノラマ画面を介し、度重なる転居、地域住民の離散状況などを説明。震災10年に当たって課題と教訓を共有した。

ワークショップは新型コロナウイルス感染症対策を徹底した上で開き、延べ30人が参加した。渡辺教授らがデジタルアーカイブから教訓を読み解いた。市民らはいかに震災の風化を防ぎ、次の災害に備えるかを考えた。

最新映像機器リキッド・ギャラクシーが映し出すデジタルアーカイブ「忘れない 震災遺族10年の軌跡」を見ながら、復旧・復興や命の大切さを考える参加者ら=4日、宮古市宮町・イーストピアみやこ

私たちは如何にして「データ」から「人」に寄り添っていくべきなのだろうか?――データのヒューマナイジングの取り組みから

東京大学大学院の渡邉英徳教授と、東京大学学生の庭田杏珠さんが、AIとヒトのコラボレーションによって写真をカラー化し、対話の場を生み出す「記憶の解凍」プロジェクトを進めている。2020年7月には『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』(光文社新書)を出版した。二人が重視しているのが「ひとつひとつのデータの向こうには人がいる」という「データのヒューマナイジング」の姿勢だ。そこにはどのような思いがあるのか、気鋭のデザインエンジニア、Takram代表の田川欣哉氏が聞いた。

「点」であるデータから、如何に生々しい「記憶」を伝え、「思い」を感じてもらうか?

渡邉:田川さんにまず、この「リキッド・ギャラクシー」システムの画面を見ていただきたいと思います。赤と青の点がさまざまな方向に向けて動いたり、止まったりしています。それぞれの点には氏名が添えられています。これは、2011年3月11日に発生した東日本大震災において、地震発生直後から津波襲来までの間に、岩手県の陸前高田市で亡くなった方々の行動の記録です。岩手日報社による聞き取り調査をもとに、最期の30分間の行動を可視化しました。赤い点は女性、青い点は男性です。

 
 

世界遺産「軍艦島」の劣化が加速…近代化を物語る遺構 後世に残すための道筋は

強い波風の影響で劣化が加速

建物の崩落、そして護岸の崩壊。長年の波風にさらされ、劣化のスピードが着実に上がっているのだ。
2020年予定されていた世界遺産委員会では、軍艦島の保全についても審議されるはずだったが、新型コロナの感染拡大で2021年に延期されてしまった。

東京理科大学工学部建築学科・今本啓一さん:
(建物の)劣化には進展期、加速期というのがある。
建物の倒壊が最終系だとした時の進行で捉えると、今は「加速期」に入っていると思う

長崎市は2011年から、軍艦島にある建物の調査を専門家に依頼している。
また2018年度から30年間にわたって軍艦島を保全・整備するための事業を決めていて、総事業費は110億円にものぼる。