「AERA」2021年1月18日号には、ある種の人々にとって我慢ならない記事が載っていた。タイトルは「『鬼滅』ブームの裏で進む倍速・ながら見・短尺化 長編ヒットの条件とは」。そこには、映画を通常の速度では観られなくなったという男性(37歳)の、「倍速にして、会話がないシーンや風景描写は飛ばしています。自分にとって映画はその瞬間の娯楽にすぎないんです」という声が紹介されていた。
同記事中、別の女性(48歳)は、Netflixの韓国ドラマ『愛の不時着』を「主人公に関する展開以外は興味がないので、それ以外のシーンは早送りしながら」観たそうだ。
この記事に怒り、嘆き、反発した人は多かった。
正直、筆者も胸がざわついた。というより、居心地が悪かった。なぜなら、かつて自分にも倍速視聴にどっぷり浸かった時期があったからだ。
出版社でDVD業界誌の編集部にいた頃、毎月決まった時期に編集部総出で大量のVHSサンプルを視聴する必要があった。ある期間内に発売されるDVD作品の中で、どれがどのくらい売れそうなのかを予測して、誌面での掲載順を決めるためだ。