父方の祖父や母方の祖母が認知症を患っていました。本人もつらかったと思いますし、暴力などもあったので家族も大変な思いで介護をしていました。私自身にとっても、祖父母の人格が変わっていく姿を見るのはとてもつらい経験でした。
そんなこともあって、私は「社会全体がもっと真剣に認知症と向き合っていく必要があるのではないか」と思うようになりました。
経済産業省職員時代、資生堂から「化粧療法を応援してもらいたい」と相談を受けました。
化粧療法は、高齢者施設を利用する女性に化粧をして差し上げる取り組みで、認知症予防を含め、介護予防に効果があると言われています。資生堂からの説明の中で「それまで自力でトイレに行けなかった人が、化粧療法を始めてしばらくしたら1人で排せつを済ませられるようになったケースもある」という話を聞いた時には、本当に驚きました。
その後、資生堂の化粧療法を経産省が健康寿命延伸モデル事業に採択し、私自身も実際に現場を訪問させていただきました。
認知症で表情の変化が全く見られない方でも、化粧をして差し上げると満面の笑みになり、急におしゃべりになられる姿はとても印象的でした。
そういった経験をする中で私自身、「認知症予防を普及していきたい」と思うようになりました。
化粧療法との出会いから間もなく、私は衆院議員に転身しましたが、以前から「制度だけ作っても、現場がついてこなければ社会は変わらない」という問題意識を持っていたこともあり、認知症予防の社会運動に取り組むことを決意し、志をともにする仲間を集めて「認知症予防の会」を設立しました。
この「認知症予防の会」では、高齢者施設を定期的に訪問して化粧療法、傾聴療法、音楽療法を実践するとともに、傾聴療法の養成講座も行っています。
その後、認知症予防に取り組む団体や企業、医療関係者などの連携の場として「全国認知症予防ネットワーク」という全国…