機械学習エンジニアは10年後には存在しないだろう

Emotional, Burning, Unlimited Tuned Laboratory

第三次AIブーム黎明期の頃、機械学習エンジニアは数学と統計学に関する専門知識を習得しているという希少さゆえに、高く評価され高額報酬を手にしていました。この職種には、最先端の技法を製品やサービスに落とし込む「研究者兼技術者」という立ち位置が依然として求められています。

しかし、近い将来、機械学習エンジニアには研究者としての側面が求められるなくなるだろう、と同氏は指摘します。というのも、機械学習システムの開発環境が整備されるにつれて、一般的なエンジニアがAPIを使って機能を実装するようにして機械学習の機能を実現できるようになるからです。そして、機械学習は数ある技術的スキルのひとつとなり、かつては希少だった「機械学習エンジニア」は多数の「機械学習に詳しいソフトウェアエンジニア」となるのです。

「コーディングなしでAIを実装」を謳うノーコードAIプラットフォームが世界各地で台頭している現状も加味すると、機械学習の陳腐化は不可避と言えそうです。この現象は「AIの民主化」を促進する好ましい側面がある一方で、「AIシステムの粗製乱造」を招くリスクもあるので注意が必要でしょう。

いくつかの妥当な対立的論点

  • シリコンバレーのテーマである「ひとつのAPIがすべてを支配する(One API to rule them all)」というのはインチキだらけであり、機械学習では常にインフラレベルである程度のカスタマイズが必要になるだろう。自然言語処理においてHuggingFaceが行ったこと(※訳註4)が、他のあらゆる分野でも起こるだろう、というのが私の考えだ。つまり、シンプルなAPIで大多数のユースケースを征服できるようになるだろう。
  • 「機械学習エンジニアなんて、単なる意識高い系エンジニアが自称する肩書だ。それは数学と統計学のバックグラウンドを平均的なコンピュータサイエンス学科の卒業生より持った人材を意味しているだけだ」という言い分には、全くもって同感だ。それはただの肩書きだ。しかし、もし この職種が不要になったら、そんな肩書は果たして存在しているだろうか。ご明察の通り、機械学習エンジニアは文字通り単なる肩書に成り下がるはずだ。
  • 「私の組織における機械学習エンジニアは、この記事で論じられたような職種ではない」。そうであるならば、ぜひあなたの組織にとってこの職種が何を意味しているのか教えてほしい。私は常に現場を調査して、現状がどのようであるか、そしてどこに向かおうとしているかを把握している。あなたの展望をぜひ聞かせてほしい。
  • 「機械学習エンジニアなんて単なる肩書だよ。誰がそんな肩書にこだわるんだ」と言うあなたは正しい。しかし、まさにその肩書について考えるのが、興味深いのだ。
  • 「機械学習は新しいユースケースと研究が絶えず実現している新興分野であり、今後10年で減速すると考えるのは甘い」。そうした考えは、非常にあり得ることだ!