Edge Computing

Emotional, Burning, Unlimited Tuned Laboratory

あらゆるモノやコトがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)時代が到来し、膨大なデータ量が流通することで、従来のクラウドコンピューティングでデータを集約・処理するだけではなく、利用者に近いエリアのエッジ側でデータを処理する「エッジコンピューティング」に注目が集まっている。では、エッジコンピューティングは我々にどのようなメリットをもたらすのだろうか。その背景を紐解いてみよう。

エッジコンピューティングとは何か?

 エッジコンピューティングとは、利用者のスマートフォンなどのインターネットにつながるIoT機器において情報を処理したり、利用者に近いエリアのネットワークにサーバを分散配置して処理を行ったりするコンピューティングモデルである。

 米調査会社のガートナーでは、エッジコンピューティングについて、「データの生成元、または、その近くでのデータ処理を容易にするソリューション」と定義している。

 クラウドコンピューティングが、サーバを集約して集中して処理する集中処理型に対して、エッジコンピューティングは、ネットワークにおける端末機器において情報を処理したり、ネットワークにサーバを分散配置して処理を行ったりする分散処理型となる。

エッジコンピューティングの4つのメリット

 IoTの普及に伴い、より多くのデバイスがネットワークを通じて接続し、データがデジタル化され、収集・蓄積され処理されるようになった。定型化されていない非構造データや映像データなど、さまざまな種類のデータ量が急増している。

 これらの収集されたデータをネットワークの向こう側にあるクラウドサービスにデータを転送し、蓄積し処理する場合、ネットワークの遅延や障害なども生じる。つまり、リアルタイム性や高信頼性といった要求される処理を満たせないケースも想定される。

 膨大なデータをネットワーク経由でクラウドサービスに転送すると、データ転送量が膨大となる。クラウドサービスであってもデータの転送料金の費用がかかりコストが高くなるケースもある。

 そこで、クラウドサービスを中心にデータの収集・蓄積や処理をしつつ、迅速なリアルタイムのデータ処理が必要とされる場合は、エッジコンピューティングで処理するといった使い分けをする。これにより、柔軟なリソース配分を行うとともに、通信量削減によるコスト低減などにもつながる。

 エッジコンピューティングは、集約されたサーバにデータを送信した上で処理するクラウドコンピューティングと比べて、データを収集する端末機器や、そこから通信経路の近いエリアで処理することで、負荷分散やトラフィックの混雑解消などのトラフィックの最適化といったメリットもある。

 また、クラウドサービスへのアクセスする場合は、通常数百ミリから数秒のタイムラグが発生するが、エッジコンピューティングの場合は、近いエリアのため、数ミリから数十ミリのタイムラグで低遅延によるデータ処理が可能となる。

 サーバを集約しているクラウドコンピューティングの場合は、クラウドサービスが何らかの障害でサービスがダウンした際、重大なビジネス機会の損失する恐れがある。企業が対象のクラウドサービスにデータを保存している場合、クラウドサービスが復旧するまで、データにアクセスすることができないためだ。

 一方、エッジコンピューティングの場合は、データを収集する端末機器から近いエリアのエッジ側で処理するため、クラウドサービスの故障の影響を受けずに、一定の時間、エッジ側で稼働させるなど持続可能性を担保できるといったメリットもある。工場内やビル内でエッジコンピューティング環境を構築していれば、クラウドサービスとの併用でBCP(事業持続計画)対策にもなるだろう。

 セキュリティ面でもメリットがある。クラウドサービスの場合は、クラウドサービスに企業の個人情報などの機微なデータを集中的に蓄積するため、外部からの攻撃によるデータ漏えいなど、データを悪用されるリスクがある。

 エッジコンピューティングの場合、エッジ側のローカルデバイスでデータを収集処理する場合は、クラウドサービス側にデータを転送することなく、安全にデータ処理をすることができるため、漏えいリスクなどを軽減することができる。

 欧州連合(EU)が2018年5月25日に、EU一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:GDPR)を施行したことも、エッジコンピューティングを加速する原因になるかもしれない。データを国内のサーバにとどめなくてはならない個人データ保護を目的としたデータローカライゼーションなどの法規則を強化していることもある。

 個人データなどはクラウドサービスに預けるのではなく、エッジ側で個人データを収集・蓄積し、処理するといったケースも増えていくだろう。つまり、エッジコンピューティングには、主に以下の4つのメリットがあるのだ。

  1. 低遅延によるリアルタイムでのデータ処理
  2. 分散処理やトラフィックの最適化
  3. 通信コストの削減
  4. セキュリティやBCP対策、データガバナンスの強化

エッジコンピューティングの市場規模は?

 米国の調査会社であるMarketsandMarketsが2017年11月に発表した「エッジコンピューティングの世界市場」によると、世界のエッジコンピューティング市場は2017年の14億7000万ドル規模から、今後2022年には67億2000万ドル市場へと急成長が見込まれている。成長の背景には、リアルタイムアプリケーションの拡大や、クラウドインフラの処理負荷増大などの要因があるという。

 日本国内では、富士キメラ総研が2018年6月に発表した、5G(第5世代移動通信)システムの関連市場調査によると、5G対応エッジ機器の市場は2019年に3兆5165億円を見込み、2023年には26兆1400億円になると、非常に高い成長率を予測している。

なお、本調査による5Gのエッジデバイス・機器・サービスは、以下の19品目を対象としている。

エッジコンピューティングが注目される理由

 エッジコンピューティングが注目されている背景は、IoTの普及に伴うデジタルデータの量が膨大に増加に伴い、低遅延での通信が求められるリアルタイムアプリケーションの利用が拡大していることが挙げられる。

 たとえば、工場での製造ラインの機械制御の場合、ミリ秒単位でのレスポンスが要求される。そのため、クラウドサービスではなく、工場内のエッジで処理する必要がある。

 また、コネクテッドカーや自動運転車は、自動車から生成される映像データや走行データ、ダイナミックマップなど、さまざまなデータのリアルタイム処理が必要となる。これらの処理にはエッジコンピューティングの活用が不可欠だ。

 さらに、デバイスの高度化/小型化や、消費電力/低コスト化もエッジコンピューティング普及の一因だ。データ収集用のセンサーに加え、データ処理用のCPU(中央演算処理装置)やGPU(画像処理半導体)が搭載され、高速な機械学習や画像処理やデータ蓄積も可能なデバイスも登場している。

こちらの記事でも紹介をしたが、2020年以降の提供が予定されている5Gはエッジコンピューティング」を支える次世代の移動通信システムとして、注目されている。

 5Gは、最高伝送速度 10Gbps の「超高速・大容量」、100万台/km2の接続機器数が可能となる「多数接続」、そして、1ミリ秒程度の遅延の「超低遅延」といった特徴を持つ次世代の移動通信システムである。「超高速・大容量」や「多数接続」「超低遅延」の特徴を持つ5Gは、エッジコンピューティングとの親和性は非常に高い。

 携帯事業者各社は、携帯電話基地局付近にサーバを配置し、低遅延でスマートフォンなどの端末側での処理を減らすことができる「モバイルエッジコンピューティング(MEC)」の拠点展開を計画しており、このMECがエッジコンピューティングの普及を後押しする可能性もある。

 また、前述したように、GDPRなどのデータ保護などに関する法規制の強化が進んでおり、機密データをクラウドサービスではなく、拠点内に保持するといったデータのローカライゼーションの流れもエッジコンピューティングを選択する理由となるだろう。

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