展望2017/日本IBM社長・ポール与那嶺氏「ワトソン、事業革新のカギ」

Emotional, Burning, Unlimited Tuned Laboratory



―米IBMのジニー・ロメッティ最高経営責任者(CEO)がトランプ次期米大統領に書簡を送ったそうですね。

「米国の生産性をもっと上げるために、今以上にIT活用が重要だ、といった内容だと聞いている。減税するにしても、まず政府機関が生産性を上げないと、予算的にも大変だ。IT活用による生産性向上は必須であり、IBMが担う役割は多いと思う」

―労働人口が減少する日本でも、IT活用が改めて注目されています。日本の現状をどう見ていますか。

「人工知能(AI)や自動化の仕組みを活用して、生産性と投資対効果(ROI)を上げることは不可欠だ。一方で、私は日本経済には追い風が吹いているとみている。世界中で一番安定している政権は日本であり、企業の収益率や時価総額なども高水準だ。加えて、日本食やアニメなどのジャパンブームで、海外から旅行者が増えている。今、日本はチャンスなのだ」

―訪日外国人(インバウンド)への対応も含め、地方創生でもIT活用が広がっていますね。

「地方自治体も動きだしている。従来はコスト削減などの“守りのIT”が中心だったが、インバウンドへリーチするためには“攻めのIT”がカギとなる。デジタル(の世界)で接点を持つことで(ビジネスとしては)観光から入り、投資や誘致につなげることも可能だ。地方はデジタル戦略を見直すタイミングだ。私の故郷であるハワイはそれで成果を上げている」

―日本のAIブームはIBMの「ワトソン」が先導役となりました。今後の展開は。

「当社はコグニティブ(認知)コンピューティングの会社を名乗っている。ワトソンはその象徴であり、事業革新のトリガーだ。ひさしぶりに重要なトリガーが誕生した」

―日本勢はAIにどう向き合えば良いのでしょうか。

「歴史のある企業ならば長年のビジネスで培ってきたデータを持っている。そこが日本企業の強みだ。これまで日本勢はIT活用ではグローバルに比べて2―5年遅れとなることが多かったが、AIは遅れていない」

―AIのプラットフォーム(基盤)は海外勢が優位です。

「プラットフォームも重要だが、データを持っていることの方が、より重要だ。日本勢はデータに重点を置いて、プラットフォームを柔軟に使いながら、急ピッチでAIの取り組みを進めていくべきだ」

【記者の目/実績積み上げ、戦略の妙味】

IBMはAIを「人間の知識を拡張し増強する拡張知能」と定義している。夢のようなAI論は語らず「すぐに使えて、短期間で効果を示せるツール」として、ワトソンを売り込んできた。ワトソンはすでに45カ国以上、20を超える業界で活用され、日本でも100社以上の顧客を持つ。ブームに乗りつつも踊らされずに、実績を積み上げていくのが戦略の妙味だ。(編集委員・斎藤実)