先日、ハーバード・ビジネス・スクールの教授であるクレイトン・クリステンセン氏が死去した。彼が1997年に執筆した「イノベーションのジレンマ」は広く知られ、その後のシリコンバレーのテック業界のみならず、世界中のあらゆるビジネス、さらにはそれによってもたらされた経済発展へ、計り知れない影響を与えた。
この著書で彼が語った、既存の企業や市場のルールを破壊して新しいものをつくり出していくという「破壊的イノベーション」の理論は、シリコンバレーに集まるスタートアップの道標となっている。
今日まで多くのスタートアップが、巨大企業が牛耳る既存の市場を破壊し、新しいルールで新たな市場を創造してきたが、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)と呼ばれる現在世界を席巻する巨大なプレイヤーたちも、クリステンセン氏の説く破壊的イノベーションを起こしてきたことで、今日のポジションを確立してきたと言えるだろう …
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なぜ日本にはいい投資先がないのか? 理由は2つある。
1つ目は、圧倒的にスタートアップ自体の数が少ないこと。終身雇用制で流動性が低い日本の労働環境のなかでは、失敗する確率の高いスタートアップを起業することに対するリスクがシリコンバレーよりもはるかに大きい。
シリコンバレーのようにスタートアップのエコシステムが発達している場所では、失敗しても受け皿はいくらでもあるし、いい失敗であればそれも起業家としての勲章になるが、日本ではまだそこまでエコシステムが成熟していない。
2つ目は、より大きなグローバルの市場に打って出られるだけの実力があるスタートアップが少ないこと。国内市場がある程度大きいがゆえに、国内だけでもそこそこの規模のビジネスができることから、スタートアップにとっては、とりあえずある程度国内でスケールすればそれなりのエグジットも見えてくる。これがグローバルへと向いていかない理由だ。
それゆえに、日本はまだGDPでは世界第3位の規模があるとはいえ、今後は縮小していく市場であり、海外に展開できないビジネスでは投資の対象として魅力に欠けるのだ …