中学卒業後15歳で入社以来、現場一筋55年、トヨタ初の叩き上げ副社長となった河合満氏に、『トヨタ物語』『トヨタ 現場の「オヤジ」たち』を上梓した作家・野地秩嘉氏が聞く。トヨタ生産方式の真の姿、モノ作りの神髄とは。
ITを、現場たたき上げ副社長はどうみるのか。
河合:僕はITが嫌いだと思われてて、そういう取材の申し込みが来たりもするんですけど、嫌いというわけじゃありません。でも僕は技能系ですから、技能主体に考える。そうすると技術の進歩には手作業の向上が欠かせないんです。
よく習字をロボットに覚えさせた場合を例に出すんですけど、習字がうまいやつの技能をロボットに移植すると、当然うまい字を書きます。これが下手なやつの技能を移植すると、当然ロボットの字も下手になる。教える人間がやれるから、ロボットに移せるんであって、うまい人がうまい感覚をロボットに教えれば、もっとうまくなるんです。