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再生医療イノベーションフォーラム元代表理事会長 戸田雄三

父に買ってもらったカメラ
浅草の近くで生まれ、おやじとよく散歩した。小学3年生のころ、現在の東京スカイツリーの近くにあったカメラ屋でおやじが買ってくれたのが当時の富士写真フイルム(現富士フイルム)のカメラ「PET35」だ。カメラを持つ人が増え始めたとはいえ、まだ高根の花だった時代。値段は覚えていないが、かなり奮発してくれたのだと思う。

カメラのファインダー越しに見える風景は、まるで別世界のようだった。すっかり写真好きになり、さっそくカメラを携えてご近所だった王貞治選手の実家の中華料理店を早朝に訪れ、サインをもらって写真も撮らせてもらおうと試みた。 王選手が巨人に入団したての初春のころだった。王選手はまだ就寝中だったが、お父さんの計らいでサインだけはゲットした。「サダハル、まだ寝てるよ」。優しいイントネーションが、今も耳に残っている。

被写体にもっとも頻繁に登場するのは、わがおやじだ。50歳で授かった僕を溺愛していた。「自分は雄三と一緒に過ごす時間が限られている」が口癖。片時も離したくないようで、飲み会にも連れて行かれた。 まだ小学校にあがる前、新年会に行ったのはいいが、おやじは地下鉄の駅のベンチで寝てしまった。終電もなくなり、駅員さんに声をかけられて、やっと目を覚ました。その時、おやじのオーバーコートで暖かく包まれた時のたばこの臭いは今でも覚えている …