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Why Decentralization Matters : なぜ分散化が重要なのか

元起業家でVC Andreessen HorowitzのパートナーのChris Dixonのブログを全訳してみました。(注:本文に出てくる単語 Cryptonetwork は、適切な訳が見当たらないので、そのままクリプトネットワークとしています。)
なぜ今ブロックチェーンがここまで注目を集めているか、その理由について、これまでのインターネットの歴史から、民主主義のあり方などを含めてとてもわかりやすく説明していると思います。

 

要約

インターネットはコミュニティの有志の力によって形作られていったが、その後大手インターネット企業の寡占化が進み、中央集権的な仕組みに変貌した。

そして今注目を集めているブロックチェーン技術によって、インターネットが再度分散化されようとしており、それが進むことでインターネット(社会)の新しい民主化が実現する可能性がある。


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インターネット初期

インターネットの創成期(1980年代~ 2000年代):ネットコミュニティによるオープンプロトコルをベースに、インターネットは形作られていった。

インターネット第二次成長期(2000年代半ば~現在まで):GAFAら大手プレーヤーが、オープンプロトコルの許容範囲をはるかに上回るスピードで事業を展開していった。特にスマートフォンの爆発的な成長がこのトレンドを加速化していき、それと共にユーザーは次第にオープンなサービスから、GAFAらが提供するより洗練されたサービスへ乗り換えていった。

この時点でのメリットはタダで多くの素晴らしいテクノロジーを使えたということ。デメリットはスタートアップ、クリエーターなどが、GAFAなどのプラットフォーマーに搾取されずにビジネスを推進していくことが難しくなりつつあることだ。この状況によって、イノベーションが起きづらくなり、インターネットの世界の面白さ、ダイナミズムが失われてしまった。中央集権化は、フェイク・ニュース、EUのプライバシー法など、社会の広範囲に渡って別の課題を生み出した。これらの問題は、これからますます根深いものになっていくだろう。


Web3 – 第三のインターネットの波

この傾向に歯止めをかける対策として、これら大手のインターネット企業に規制を設ける、という案がある。これは、インターネットが、電話やテレビなど過去のネットワークと変わらない通信ビジネスという前提に基づいているが、こういったハードウェアがベースとなった通信ビジネスは、ソフトウェアがベースのインターネットと根本的に違うものだ。ハードウェアベースのネットワークは、一度構築されたら、再構築はほとんど無理だが、ソフトウェアベースのネットワークは、自由自在に再構築できる。

インターネットは究極のソフトウェアベースのネットワークであり、ソフトウェアというものは、言ってみれば人間の考えをコード化したもの。インターネットに繋がったコンピュータでは、基本どんなソフトウェアでも稼動できる。インターネットのアーキテクチャは、技術的なクリエイティビティと真っ当な動機付けが交わった上に成り立っている。

インターネットはまだ発展途上だ。今後数十年の間で、インターネットのコアなサービスの大部分はクリプト・ネットワークによって再編されるだろう。クリプト・ネットワークは、インターネット初期の最良の要素を兼ね備えている;コミュニティによる統治と、中央集権化されたサービスをいずれ凌ぐ可能性をもつ分散ネットワークだ。


なぜ分散化が必要なのか?

非中央集権化(分散化)は誤解されがちなコンセプトだ。クリプトネットワークの支持者は、分散化によって当局のセンサーシップを免れるからなどの理由で非中央集権化を好んでいる、などと思われがちだが、それが非中央集権化・分散化のポイントではない。

まず中央集権化されたプラットフォームの問題を見てみよう。それは予想可能なライフサイクルがベースとなっていて、サービスを始める時、新規顧客やサードパーティのパートナーなどを取り込むために、あらゆる手段を講じる。プラットフォームは、多方向のネットワーク効果があるシステムなので、より多くの顧客やパートナーがいた方が、よりその価値が増すのだ。プラットフォームがSカーブを描いて発展するにつれ、顧客やパートナーへの支配力は増していく。

そして、このSカーブの頂点に達した時、顧客・パートナーとの関係性が非ゼロサムゲーム(positive-sum game)からゼロサムゲーム(zero-sum game)へと変わる。もっとも簡単な成長の仕方は、ユーザーからデータを抽出し、オーディエンスと収益の面で補完するところと戦うことだ。これまでの例としては、Microsoft 対 Netscape、Google 対 Yelp、Facebook 対 Zynga、Twitter 対 サードパーティのクライアント、などがある。iOSやアンドロイドなどのOSは、30%の課税があるものの、恣意的な理由でアプリを認めなかったり、サードパーティのアプリの機能を好きなように組み込んだりしている。

サードパーティにとっては、この「協業」から「競争」へのシフトは、おとり販売にはまったように感じるだろう。第一線の起業家・開発者・投資家らはこういったプラットフォームを前提とした開発に、だんだん慎重になってきている。実際に、過去数十年に渡ってそうして開発されたものが、残念な結果に終わっている。それに加え、ユーザーはプライバシー・自分のデータの管理を諦め、セキュリティの脅威にさらされている。中央集権化されたプラットフォームのこれらの問題は、将来更に増えて行くだろう。


クリプト・ネットワーク(Cryptonetworks)

クリプトネットワークは、1)ステータスの維持やアップデートのために、ブロックチェーンなどの合意メカニズムを使ったインターネット、2)参加者(マイナー・認証者)の合意を奨励するために仮想通貨を使ったインターネット、の上で構築されたネットワークである。

Ethereumなどのクリプト・ネットワークは、汎用的なプログラミング・プラットフォームである。一方、いくつかのクリプト・ネットワークは特定の用途向けに作られており、例えばBitcoinは主に価値を貯めるため、Golemは計算を行うため、Filecoinは分散化ファイル・ストレージのために使われる。

初期のインターネット・プロトコルは、インターネット・コミュニティが拡大することを目的として、有志のワーキンググループやNPOによって作られた技術的なスペックである。このやり方は、インターネットの初期の段階ではうまくいったが、1990年代以降になると、新しいプロトコルはほとんど採用されなくなった。クリプト・ネットワークは、開発者や管理者などにトークンという形で経済的なインセンティブを貸与することで、この問題を解決した。また、クリプトネットワークは技術的にも非常に堅牢である。例えば、ステータスを維持しながらそのステータス上で任意の変換を行うことができる。これは過去のプロトコルではできなかったことだ。

クリプトネットワークは、拡張しつつ中立性を維持するために複数のメカニズムを使っているが、これによって中央集権化されたプラットフォームの罠を避けることができる。まず、クリプトネットワークと参加者間の契約は、オープンソースコードで強化される。次に、”発言力(Voice)と”出口(Exit)”の機能を通じてコントロールされる。参加者は、プロトコル、またはプロトコル周辺のソーシャル構造両方から構成されるコミュニティ・ガバナンスを通じて発言力が与えられる。参加者は、そのネットワークから離脱する、仮想コインを売る、または極端なケースではそのプロトコルをフォークすることで、エグジットできる。

簡単に言えば、クリプトネットワークとそのネットワークの参加者は共通のゴールを共有している。そのゴールとは、そのネットワークの成長とトークンの価値の上昇である。Etheriumなどの新しいクリプトネットワークが拡大している事実があるとしても、このゴールがBitcoinが猜疑心をはねのけ成長している大きな理由の一つとなっている。

今日現在のクリプトネットワークは、インターネット企業大手プラットフォーマーと比較していくつか劣っている点がある。もっとも重要な課題は、パフォーマンスとスケーラビリティの限界だが、これから数年の間で、これらの限界は解消され、仮想スタックのインフラ層を形作るネットワークが生まれるだろう。その後、そのインフラの上でアプリケーションが開発されることとなる。


いかに分散化ネットワークが勝利するか

分散化ネットワークは広まって然るべきものと言えるが、強制しなくてもいずれ自然と広まっていくだろう。このように楽観的な理由を以下に述べる。

ソフトウェアとウェブサービスはデベロッパーによって開発される。世界には何百万人もの非常に高度なスキルを持った開発者が存在する。そのうちのほんの一部の開発者が大手IT企業で働き、そのうちのほんの一部が新規製品開発に携わる。一方、これまでの多くの重要なソフトウェアのプロジェクトは、スタートアップ、あるいはフリーの開発者のコミュニティから生まれた。

分散化ネットワークは、インターネット第一期の時と同様の理由 ー 起業家と開発者の心を掴むことー で、第三期でも勝つことができる。

その好例としては、2000年代に戦ったWikipediaとEncartaがある。この2つのサービスを2000年代初期に比べてみると、Encartaの方がより多い項目をカバーして、かつ正確さも上回っていた。しかし、分散化コミュニティの理念に惹かれた任意の協力者から構成されたアクティブなコミュニティによって、WikipediaはEncartaをはるかに上回るペースで開発が進んでいったのだ。2005年にはWikipediaはインターネットで最も参照されるサイトになり、一方でEncartaは2009年にサービス終了した。

中央集権システムと分散化システムを比べる時、静的ではなく動的にそれらを観察しなければならない。中央集権システムは相当作り込みが進んでからリリースされることが多い。一方分散化システムは不完全な状態でリリースされる場合があるが、その開発をボランティアで請け負う人々が現れた場合、そのシステムは飛躍的に改良される。

クリプトネットワークの場合、コア・プロトコルやサードパーティ・アプリケーションの開発者やそのネットワークを運営するサービスプロバイダーらを含めた幾重ものフィードバック・ループが存在する。これらのフィードバック・ループはBitcoinやEthereumに見られるように、関連するトークンのインセンティブによって更に増幅される。

分散化システムと中央集権システムのどちらが次世代インターネットのスタンダードになるかという問いは、誰が最も優秀な製品を開発するかという点に集約される。そして、それはいかによりレベルの高い開発者と起業家を呼び込めるかに尽きる。GAFAらの大手ITプラットフォーマーは潤沢な資金、巨大なユーザーベース、オペレーション・インフラなど、多くの点でアドバンテージがある。一方、クリプトネットワークは、開発者や起業家にとって、相当魅力のある動機付け(value proposition)がある。もし優秀な開発者らを上手く取り込むことができれば、クリプトネットワークはGAFAなどよりはるかに多くのリソースを動かし、急速に製品開発を成し遂げることができるだろう。

中央集権プラットフォームは、強力なアプリケーションを伴うことが多い。Facebookはコアのソーシャル機能があるし、iPhoneにはいくつかのキー・アプリがある。一方、分散化プラットフォームは、明確なユースケースがないままリリースされることが多い。その結果、分散化プラットフォームは2つのプロダクト・マーケット・フィットのフェーズを辿ることになる。1)分散化プラットフォームと、そのプラットフォームを完成させエコシステムを作り上げる開発者との適合性を図るフェーズ、2)そのプラットフォーム・エコシステムとエンドユーザーとの適合性を図るフェーズ、この2つのフェーズだ。

この2つのプロセスが、分散化プラットフォームの可能性の過小評価に繋がることが往往にしてある。


次世代インターネット

分散化ネットワークは、インターネットの全ての問題を一度に解決できる秘伝の策ではないが、中央集権システムより、ずっと優れたアプローチを提供する。

Twitterのスパムをemailのスパムと比べてみよう。Twitterはそのネットワークをサードパーティの開発者までにとどめているので、Twitterのスパム問題に取り組める企業はTwitterだけに限られる。一方、何百もの企業がemailのスパムに対して対策を講じている。

または、ネットワーク・ガバナンスの問題を考えてみるといい。今日、大手ITプラットフォーム企業の任意の社員らが、どのユーザーを特別扱いしてどのユーザーをそのネットワークから締め出すか、また他の重要な政府機関の決定事項などについて、どう情報をランク付け・フィルタリングするかを決めたりしている。クリプトネットワークでは、これらの決定はオープンで透明な仕組みの上で、コミュニティによって執り行われる。現実社会では、民主主義が完璧でないのは誰もが知っているが、他の仕組みよりははるかに優れていると言っていい。

中央集権プラットフォームは長い間主導権を握っていたので、多くの人は、それ以外にインターネットサービスを開発するもっといい方法があることを忘れてしまっている。クリプトネットワークは、コミュニティ主導ネットワークを開発するパワフルな方法であり、サードパーティの開発者やクリエーターに、活躍の場を提供する。インターネット初期の時代にはそういった分散化システムの価値をみることができた。インターネットの次の世代に、また同じような仕組みが現れることを期待したい。